【融資】金融検査マニュアル廃止による影響

2019年12月を目途に、金融庁の検査マニュアルが廃止されることとなりました。
 
その結果、金融機関の融資の姿勢は変わるのでしょうか?
 

金融検査マニュアル整備から廃止までの変遷

検査マニュアルは、金融庁の検査官の手引書として位置づけられ、金融機関がマニュアルを参照して自らの方針や内部規定を作成することを期待するというものでした。
 
検査マニュアルの特徴は、金融行政の考え方を詳細に示さずに、つまり数値基準的なことは示さずに、方法論を示していることです。
 
金融機関自身で判断基準を設けよという方針でした。
 
そうすると、どうしても保守的に最低基準を設定しようとする傾向が主流となりました。
 
検査マニュアルは、金融危機の時代には最低限のリスク管理態勢、法令遵守・顧客保護態勢を確立する上で、大きな役割を果たしたといえます。しかし、2002年からの長きにわたり、マニュアルを用いた定期的な検査が反復された結果、次のような懸念点が表出してきました。
 
〈 金融検査・監督の考え方と進め方:2017年12月 金融庁〉
– チェックリストの確認が検査の焦点になり、検査官による形式的・些末な指摘が助長され、実質や全体像が見失われる。
– 金融機関がチェックリストの形式的遵守を図り、自己管理の形式化・リスク管理のコンプラ化につながる。
– 最低基準さえ充足していればよいという企業文化を生む。
– 検査マニュアルに基づく過去の検査指摘が、環境や課題が変化したにもかかわらず、暗黙のルールのようになってしまう。
– 検査マニュアル対応を念頭に策定された金融機関の詳細な内部規定が固定化し、行内において自己変革を避ける口実として用いられたり、創意工夫の障害となったりする。
 
このような点が懸念されるに至っており、現時点ですでに、実際の検査には用いられていないのが現状です。
 
金融庁は、最近の検査・監督の現場においては、事業の将来性等の企業実態のより深い把握を促すことに重点を置いていました。
 
しかし金融機関によっては、依然として借り手の実態を把握して将来の損失発生確率をより的確に見通す努力を行うよりも、外形的な基準や過去データ、担保・保証等に着目した実務を続ける方が安心であるという考え方も根強くあるとし、マニュアルがすでにその役割を終えていること、またマニュアルが残っている限りこうした問題はなくならないとして、今回のマニュアル廃止を決めたようです。
 

日本型金融排除とは

CRDを代表とするスコアリングモデルの運用経験の蓄積から、財務格付を軸としたシステマティックな融資の方が結果としてデフォルトリスクが削減でき、また融資判断における個人責任を問われないという点もあり、財務格付上位に融資が集中し、過度な低金利競争による地域金融機関同士の体力消耗戦が続いています。
 
そしてその結果、格付下位層の中小企業にリスクをとった融資が行われないという構造的な貸出態度を、金融庁は「日本型金融排除」と評して問題視しています。
 
さらに金融庁は、「『不良債権を絶対につくらない』のではなく『適切なリスクテイクを通じて収益性と健全性を両立させていく』ビジネスモデルを実現しようとする場合には、たとえ簡素ではあっても機械的ではない的確な実態把握に基づいて債権管理を行っていくことが必要になる。」というコメントも述べています。
 
わかりやすく言い換えれば、「きちんとリスクテイクをして、その分金利を高めに取ればいい、その際には形式的な財務分析だけでなく、企業とのコミュニケーションを通じた実態把握が重要である。」というメッセージです。
 
至極あたりまえのことですが、現状の地域金融機関は、リスクオフを重視するあまり異常な貸出金利の低下に苦しんでいます。
 
今後の地域金融機関の経営戦略としては中小企業融資はコスト部門としてとらえ、支店機能を含め国内融資業務を縮減していくか、メガバンクが中小企業融資から撤退する方針の中で、ミドルリスクを受け入れる事業融資の変革を進め、国内融資を拡充するのかどちらかの選択に迫られることになるでしょう。
 
その意味では、中小企業融資全体でみればリスクをとった融資の割合が伸長していく期待が持てます。一方で厳しい言い方ですがリスクを取れない金融機関は存在意義を失い、淘汰、吸収され、オーバーバンキングと言われる国内の金融機関数、店舗数が減少し、中小企業融資の需給バランスが調整されていくのではと考えられます。
 

今後の評価方法は?

しかしながら、興味深いのは近況、リスクをとった融資に積極的な金融機関の支店長や、職員と話す際に「リスクを取るには融資の際により実態把握をするのは当然だが、重要視する財務指標とかが変わったという点はあるのか」と聞くと、多くが「いや、やはり債務超過でないこと、債務償還年数の10年未満という指標はかわらず、最重要だ、検査マニュアルが廃止されようがこの指標は実際に有効な判断材料だ。」
と回答されることです。
 
確かに、そうかもしれません。
 
金融庁が採用したこの「形式基準」ですが、実は実態として使える判断材料となっているのです。
 
また、この2点の指標はCRDの評点にも大きく関係する指標なのです。
 
つまりは、潰れいくい財務を最も表している指標と言えるのです。
 
結論として、
 
検査マニュアルが廃止されることで
・中小企業融資には影響はなく、中小企業融資は全体としてリスクをとるようになるだろう
・重要とされる財務指標は変わらず
 
ということになります。