東京高裁は、馬券の払戻金について争われた事件について、「一時所得」とした一審の東京地裁判決を取り消し、「雑所得」とする納税者側の主張を認めました。(東京地裁:平成24年(行ウ)第849号、平成27年5月14日判決)。

 

東京高裁は、納税者がコンピュータソフトを使用しないで独自のノウハウで購入した馬券の払戻金は雑所得に該当するため、外れ馬券を含む馬券購入代金の全体が必要経費とすると判断しました。

今回の裁判での争点は、①馬券の払戻金が雑所得に該当するか否か、②外れ馬券を含めた馬券の購入代金の全体が必要経費とするか否かの2点です。

 

同様の争点で争われた最高裁判決では、①②について、次のように判示していました。

 

馬券を自動購入ソフトの利用により独自の条件設定等に基づいて長期間にわたって多数回、かつ、頻繁に購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げていた本件の事実関係の下では、払戻金は雑所得に該当する。

 

当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの事実関係の下では、外れ馬券の購入代金は必要経費となる。

 

 

これを受けた国税庁は、 所得税基本通達34-1 を改正しています。

 

 

この点で本件の納税者は、最高裁判決の納税者とは異なり、コンピュータソフトを使用して自動的に馬券を購入していません。

 

競走馬や騎手の特徴等を自ら分析等を行い、購入のパターンを定め、どのように馬券を購入するかを個別的に判断していました。

 

東京高裁は、納税者が独自のノウハウに基づいて長期間にわたり多数回・頻繁に馬券の網羅的な購入をして多額の利益を恒常的に上げていること、このような一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有すると指摘し、最高裁判決の納税者が馬券を自動購入するソフトを使用する際に用いた独自の条件設定と計算式も、独自のノウハウといえ、本件の納税者と最高裁判決の納税者の馬券の購入方法に本質的な違いはないとしました。

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