長期借入金で運転資金を借りる

前回まで所要運転資金に対する融資を解説してきました。
 
手形貸付及び当座貸越は1年以下の期間を対象としていますので、貸借対照表上は短期借入金となります。
 
今回からは長期の借入について説明していきます。
 
我々税理士が経営者から受ける融資に関する質問はほとんどが次の2つです。
 
「うちの会社は幾らまで借りられる?」
「うちの会社の借入の借入額は多すぎないか(又は少なすぎないか)?」
 
この質問対して明確な回答ができる税理士は残念ながら少ないのではないでしょうか。
 
長期借入金の適正額は下記のとおりです。
 

 債務償還年数 7年以内

 
これだけでは意味が分からないでしょうから、順を追って説明していきます。
 
債務償還年数とは「借入金を何年で返済できるのか」と換言できます。
 
つまり、債務償年数7年とは借入金を7年で返済できるという意味です。
 
では、債務償還年数はどのように計算するかと言いますと、
 

要償還債務÷キャッシュフロー

 
によって計算されます。
 
また知らない単語がでてきました。
 
要償還債務とはその言葉のとおり「返済を要する債務」のことであり、

 

(短期借入金+長期借入金)-所要運転資金

 
という算式により算出されます。何故所要運転資金をマイナスするのでしょうか?
 
前回まで解説してきたとおり、所要運転資金に対する融資は手形貸付や当座貸越によりお金を借りっぱなしとなります。
 
返す必要のない金額ですので、「要償還」債務からは控除されるのです。
 
次にキャッシュフローですが、
 

経常利益+減価償却費-法人税等

 
により計算できます。
 
銀行によって債務償還年数を10年以内に設定している場合や15年以内に設定しているケースもあります。
 
10年以内であれば合格点、7年以内であれば優秀と押さえておきましょう。
 
出は具体的な数字で債務償還年数を計算してみましょう。
 

≪具体例≫
売掛金 300
棚卸資産 200
買掛金 200
短期借入金 150
長期借入金 1200
経常利益 100
減価償却費 50
法人税等 30

 
所要運転資金=300+200-200=300
要償還債務=(150+1200)-300=1050
キャッシュフロー=100+50-30=120
債務償還年数=1050÷120=8.75年
 
この会社の場合、債務償還年数が10年未満となっていますので長期借入金の額は合格点と評価できます。
 
では、ここで少し応用的な解説をしてみましょう。
 
所要運転資金300に対して短期借入金が150となっていますので、150の追加借入を検討できます。
 
長期借入金については債務償還年数7年以内が目標となりますので、このまま返済を進めて償還年数を短くするのもいいですし、資金にもう少し余裕が欲しいのであれば10年以内に収まるような追加融資の検討をしても良いでしょう。
 

まとめ

・債務償還年数7年(10年)以内を目指す
・債務償還年数=要償還債務÷キャッシュフロー
・要償還債務=(短期借入金+長期借入金)-所要運転資金
・キャッシュフロー=経常利益+減価償却費-法人税等

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