事業年度開始の日から3か月以内に変更する
役員報酬は一旦毎月の支給額を決定した場合、次回の定時株主総会等により役員報酬の支払額を改定するまでの間同額で支払う必要があります。これを「定期同額給与」といい、恣意的な利益操作に利用していないため損金(税金を計算する際の経費)として認められるというものです。
損金に算入される役員報酬には、定期同額給与以外にも、事前に税務署に支給額額を届けておく「事前確定届出給与」や、「利益(業績)連動給与」がありますが、本記事では割愛いたします。
定期同額給与の金額変更は、原則として事業年度開始の日から3か月以内に行う必要があります。
変更期限:6月末
中小企業の場合、5月の定時株主総会により変更の決議をして、5月又は6月に支給する役員報酬より変更するケースが多い
上記以外の時期に役員報酬を変更した場合、損金とならない金額が発生することにより法人税等の負担が増加してしまいますので、安易な金額変更はしないようにしましょう。
ただし、一定の「変更が認められる条件」を満たすと、年度の途中でも変更できることになっています。
具体的には「臨時改定事由」や「業績悪化改定事由」に該当するケースとなります。
臨時改定事由の具体例
臨時改訂事由の具体例は以下のようなものです。
【役員の就任・退任・分掌変更】
事業年度の中途において新たに役員となとなった場合又は役員を退任した場合には、一般的には、その地位及び職務内容ともに重大な変更があると認められることから、臨時改定事由に該当します。
同様に、事業年度の中途において副社長が社長に就任したような場合(分掌変更)にも臨時改訂事由となります。
【組織再編があった場合】
合併などがあった場合には、同じ取締役であったとしても職務内容に重大な変更がある場合等には臨時改訂事由となります。
【傷病により職務が執行できない場合】
病気やけがにより、役員が当初予定していた職務の執行ができない場合には臨時改訂事由となります。
【不祥事等の場合】
会社や役員が不祥事等を起こした場合、役員報酬を一定期間減額することがあります。この減額が社会通念上相当と認められる範囲のものであるときは、臨時改定事由に該当します。
業績悪化事由
事業年度の中途において経営状況が著しく悪化したこと等によりされた役員報酬改定した場合には定期同額給与となります。
具体的には以下のようなものをいいます。
・取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議で要請され減額した場合
・経営悪化の状況下で取引先等からの信用確保のため、経営改善計画が策定され、役員給与減額が盛り込まれた場合
上記に該当するかは、会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない「客観的な事情」(例 主要取引先の倒産やリコール発生により業績悪化が不可避)があるかどうかにより判定します。裁決では経常利益6%減の会社が行った減額改定が否認された例があります。
役員報酬変更の手続き
以下のような手順で手続きを行います。
【事業年度開始の日から3か月以内の変更】
定時株主総会の決議を行う。
議決内容を議事録に残しておきます。この議事録は税務調査の際に定期同額給与に該当することを証明するための証憑となりますので必ず作成しておきましょう。
【臨時改訂事由や業績悪化の場合】
臨時改訂事由や業績悪化場合の場合の手続きもほぼ同様です。
臨時株主総会の決議を行い、議事録を作成します。